嫌悪を引き受ける覚悟

俺は、金も地位も、くだらないと思っていた。
子供の頃から、ずっと。
友情や、愛情。
そういうものさえあればいいと、心の底から信じていた。
本気だった。
あの頃の俺は、本当にそう生きていたし、
このままでいいと思っていた。
でも、気付いてしまう時がくる。
それだけじゃ、何も護れない。
大切なもの。
愛や友情。
護りたいと想うのに自分は愚か、
人のことなんて気にしていられない状況。
愛だけでは、目の前で沈んでいく人を、引き上げられなかった。
俺の「愛だけでいい」は、綺麗だったと思う。
ただ、それだけでは弱過ぎた。
だから俺は、一番嫌いだったものを取りに行く。
金を。地位を。力を。
死ぬほど嫌いだったそれらを。
武器を持った相手から人を護るには、武器がいる。
今でも苦しい。
あれほど軽蔑していたものに、自分から手を伸ばしているんだから。
しかしある時、気づいたことがある。
「俺が本当に嫌っていたのは、金や地位そのものだったのか?」
いいや。
それらを得て、
冷め切ってしまった人間。
「温かみなんて要らない」と、平気で言い切る人間。
地位を盾にして金で物を言わすふんぞり返った人間。
人を見下し、自分の方が上なんだと主張する人間。
あれが、嫌いなんだと気づいた。
なら既に、答えは出ている。
なんのための力だ。
俺は、力を持っても、愛情を捨てない。
俺は自分にあるどうしようもない
人情や義侠心は俺の誇りだ。
俺の中にある志は、あの日のままだ。
変えたのは、それを護る方法だけ。
嫌いだったはずの力を、自分の手で握る。
道を逸れない、と決めて。
まずは、目の前の一隅を。
灯りで俺が照らせるように。